1・良い調律・良い調律師編 | ||
より良い調律をしてもらうには。 |
調律料金は、日頃のお買い物の金額を考えたら安いとはいえませんよね。 調律は相当神経を集中させた状態で行う特殊技術であり、技術者も自らが出張して行うために、1日にそう何台も調律できませんから、どうしても1件あたりの技術料金は高くなってしまいます。 そうは言っても、決まった料金を払うのですから、少しでも良い作業をしてもらいたいものですね。ここでは、より良い調律をしてもらって得をするための、ちょっとした工夫を説明します。 1・調律は調律師がすすめる時期にしましょう。 ピアノの音は、毎日少しずつ狂っていきます。ただ、その狂いも常にピッタリ合っている状態を求められても無理がありますが、余りにも大きく狂ってしまっては弾いていて不快ですし、なにより音が狂うというのは弦の引っ張り具合のバランスがくずれているので、ピアノの木や金属の部品にとっても大きな負担になります。 ピアノの狂い具合は、ピアノの周囲の温度湿度の変化や演奏方法、ピアノのくせなどによって差があります。大きく狂う前に調律をしなければ、調律してもすぐに狂ってしまいます。そんなひどい状態での作業では、こだわった音作りまでできません。 1台1台、ピアノの使用状態や部品の状態、環境に合わせた最適な調律時期は、担当の調律師に判断してもらいましょう。調律師は、ピアノがこの環境でどのくらい使われるとどの程度音が狂ったり調整がずれたりするのかを予測できます。おすすめする時期に調律や調整をしていただくことで、ピアノの音をより良くして長持ちさせることができます。調律の時期は、お金をもうけたくて「こまめにやってください」ということではないのです。ピアノを愛する調律師だからこそ、ピアノのためを思ってアドバイスしています。 2・作業前に気になるところをチェック! 調律師は、ピアノの中を見たり音を出すだけで、どこの部品が悪いのかどのような使い方をされているのか、以前の状態からピアノがどのように変化しているのかなどを判断することができます。しかし、ピアノの状態自体は日々変化していますから、必ずしも年間を通してのピアノの状態すべてがわかるわけではありません。また、調整が基準通りに合っていても、それが普段お使いになっている演奏者の好み合っているのかを正しく判断できるとは限りません。そのピアノの年間の細かな変化を一番よく知っているのは、普段お弾きになっている演奏者ご自身なのです。 不具合(鍵盤の動きが悪いことがあった、音が出にくいことがあった等)の内容は、正確にチェックしておいてその都度メモに書き留めておき、作業前に調律師に伝えてください。湿度が比較的高くなる夕方によくお使いになっている場合、調律する時間帯が午前中の湿度の低い時間だったりすると、不具合箇所がたまたま調子良くなっていることもあるからです。 また、音色やタッチに関しても気になることがあれば、作業前に積極的に相談してみましょう。「中身のことはよくわからないから」というのは、調律師だってお客様と理論の話をしようと思っていませんから、気にすることはありません。演奏していて気になったことは、自分なりの言葉で自分のイメージするものを伝えてみてください。お客様が例えば、「音色がこもって聞こえた」とか、「タッチが重く感じた」と言われたことに対して、数多くある調整部分の中からどの部分を調整すればよいのかは、お客様とお話を進めていく中で調律師がそのピアノに合った方法を判断します。 なにより、お客様のピアノに対する思い入れがわかれば、それだけより的確で集中した作業ができます。調律師はピアノが好きでやっているわけですから、色々と注文があったほうが、やりがいがあります。ただし、音色変更やタッチ変更には内容によって別途に費用がかかることがありますので、追加作業料金など必要な費用については必ず作業前に確認しておきましょう。大幅な調整変更作業には数万円かかることもあります。 3・作業中には静かにしたほうが良い?エアコンはつけたほうが良い? ほとんどのお客様は、「調律をしているときには、静かに」と気を使っていただいています。調律しているときに聴いている音は、ピアノのドレミ・・・の音を合わせるときにその音が聴こえていれば良いというものではなく、実際には1つの音に含まれている数多くの倍音(詳しい説明は省きます)やピアノ全体の響き方、周りへの響き方などのバランスといった非常にかすかな響きも同時に聴きながら調律しています。ですから、ピアノのすぐそばでテレビを見たり音楽をきいたり大声で談笑したりされると作業は非常にやりづらくなります。と言っても、ある程度の生活音くらいは気にしないで調律できますから、余り神経質に「シーーーン」としていただかなくても差し支えありません。ただ、静かな方がより細かく丁寧な作業がしやすいことは確かです。 冷暖房はもともとピアノにとって良くありませんが、普段使用されているのであれば、つけていただけると普段の状態がわかりやすくなります。ただし、作業中に温度湿度が大きく変化してしまうと途中から音程が変わってしまい調律ができないこともあります。お部屋の温度が急に10度も変化すれば1年分くらいの音が一時的に狂ってしまうこともあるんですよ。もし、冷暖房をつけていただくのでしたら作業前につけていただければ幸いです。この点は調律師によってやりやすい環境が違いますので、気にしていただけるようでしたら、事前に担当する調律師に確認していただけると良いでしょう 「調律しているところを見ていたい」というお声をよくききます。私は大歓迎です。特に演奏している方(子供さんであっても)に見ていただけるのはとてもうれしいです。中身がよくはわからなくても、作業している所を見ていると音の出かたを知ることができますし、興味を持っていただけるだけで調律師はうれしくなります。中身はまかせっきりという感覚も、作業を見るだけで「自分の楽器」という思いも強く持てるようになるでしょう。中身を見ていて疑問な点は遠慮なくきいてみるのも良いでしょうね。ただ、調律師によってはそばで見られるのを苦手とする人もいますから、一応、先にきいてみましょう。 4・作業後には? 調律が終わった後は、調律師からピアノの状態についての報告があると思いますが、お客様からも質問してみてください。できれば、作業後に調律師の前で普段お使いの方が曲を弾いてみていただけると良いです。弾いてみて作業前と作業後の変化の感想を教えていただけると次回からの作業の方針もたちますし、場合によってはその場でさらに微調整ができることもあります。調律師側は、普段お使いの演奏者が演奏しているところを見ることによって、演奏者がどんな響きを好んでいるのか、どんなタッチで弾いているのか、どうやって音を出そうとしているのかを、より多く判断することができます。それが次回の作業でさらにどのような味付けや工夫をすれば良いのかの方針を立てることにつながります。 次回の調律の時期が来ると調律師から電話等で連絡があるでしょうが、演奏者も次回のおすすめの時期はきいておきましょう。個人の調律事務所ではなく大手の楽器店のように調律師が複数所属しているお店に調律を依頼されている場合には、、担当調律師が一方的に変わることもあります。変わってほしくない場合は、調律時期が近づいたら電話で指名をして予約しておくのが確実です(指名料金を請求されることはないと思いますよ)。調律師にとっても毎年同じピアノをメンテナンスするほうが、より演奏者やピアノに合った的確な作業ができます。 |