3・ピアノの状態編
音色が気に入らない。


 


 ピアノの音色は、演奏の仕方で様々に表現することができる優秀な楽器です。しかし、ピアノの音色は演奏者が表現する以前に、ピアノ自体の個性やピアノが設置してある部屋や周囲の環境によっても、違いがあります。世の中に全く同じように響くピアノはないといっても良いでしょう。

 ピアノはあくまでピアノの音がしますが、コンサートやCD、友人や先生のお宅など、自分の家以外のピアノの音を聴いた経験があれば、自分の家のピアノと他のピアノでは音色が違うと感じたことがあると思います。問題は、その音色が気に入らなかった場合です。調律が正確にされていても、ピアノの音色には絶対に正しい音色というのもはありません。ピアノの個性もあれば、演奏者の個性もありますので、個々のピアノにあった音色に調整されているのが望ましいです。ここでは、一般のご家庭にある、特定の方が使用するピアノについて述べます。コンサート会場や、音楽教室などの不特定多数の方が使用するピアノについては、音色調整に制約がありますので、ピアノの管理者及び現場の担当調律師とよく相談してください。

 まず、ピアノの音色が気に入らないなら、担当調律師に相談して、音色の変更を依頼してください。しかし、その作業内容は、状況により様々です。また、音色を変えられる範囲も様々です。例えば、今の音色がこもっているので、もう少しはっきりとはりのある音にして欲しいといったことなら可能ですが、アップライトピアノの音をグランドピアノの音にしてほしいと言われても、無理な話です。
 音色は、第一にピアノの設計と材質で決まります。次に、設置する部屋の環境でもかなり変わります。例えば、木造の和室に設置する場合は、やわらかく落ち着いた音に、マンションのリビングに設置する場合は、はっきりと明るい音に響きやすくなります。そして、最後には、演奏者の弾きこみ方でピアノの音色は年々変化していきます。演奏者の癖がピアノの音色に現れるのです。

 ですから、ピアノの音色を楽しむためには、

(1)まず、購入時には購入したいピアノの音色を聴いてみる。もし、購入するピアノを事前に弾いて確かめることができないのなら、せめて同タイプのピアノの音色を弾いてみる。(信頼できるピアノの先生や調律師に依頼しても良いでしょう。)

(2)ピアノの設置場所について、信頼できる調律師に設置場所のアドバイスを受ける。
温度・湿度の変化が大きい場所では、ピアノが傷むのも早くなりますし、響きすぎる・こもりすぎるようなお部屋では、どんなに良い音のピアノを購入されても、部屋の中できれいに響きません。

(3)楽しく充分に弾きこむ。
ピアノは、特定の人が上手に弾きこむことによって、演奏者が望む音が出やすくなっていきます。曲のレベルが高い低いと言うことではなく、いかに自然に演奏者が弾きこむかが重要です。楽しく弾いていれば、演奏者にとって年々良い音に変化していくはずです。電子ピアノではないので、はじめからずっと同じ音しかしないピアノというのもつまらないと思います。ぜひ、ご自分でよいピアノに仕上げてください。

 さて、問題はこのあとです。以上のことをやっていただいても音色が気に入らないのであれば、音色を変えるしかありません。音色を変えるのには簡単な方法から、中身の調整を必要とするのもまで、多くの方法があります。ご希望の音色と、現在のピアノの音色の差によってその方法が違いますので、調律師に相談してみてください。音色は、少なからずとも、変えることはできます。ただし、その費用もピアノにかかる負担も様々ですから、作業前に良く確認してください。