4・ピアノ購入編
良いピアノを選ぶには?


●自分に相性ピッタリのピアノ選びは、自分の耳と手で!

 ピアノの音色やタッチの感覚は、メーカーや機種によっても様々な個性・特徴があり、さらに細かく言うと同じ機種であっても1台1台に音色の個性があります。たとえば、ピアノのスピーカーにあたる響板(弦の裏側に一面にはってある板)は木ですから、1台1台の音が違ってくるのも当然です。まったく同じ木が何本もあるとはあまり考えられませんから。出来ることなら、ピアノを購入されるときに簡単な曲で良いので、実際に弾き比べて少しでも好みにあった音のピアノを選びたいものです。

 これからピアノを購入される予定のある方は、できるだけ自分の耳と手で選んで欲しいです。


 良いピアノ悪いピアノ
の判断には多くの要素があります。
 ピアノを設計・製造・修理する技術者側での判断では、鍵盤タッチなどが規格通りに出来ていて部品の動きがロスが少なくスムーズで調整も正確であるかどうか、音色や音量のバランスや表現力が豊かであるか、そして、長期間ご使用いただいていく過程で製造設計・材質・調整の不備による故障がいかに少ないか、様々な環境下での耐久性があるのか、ということになります。
 演奏者側からピアノの良し悪しを決めるのであれば、欠陥商品でないことは当たり前のことですが、購入後に弾き込んでいって自分の好みの音、表現力が期待できるのか、タッチが自分に手や演奏方法に合って弾きやすいものかを判断しなければなりません。

 自分で演奏するなどして判断することが難しい場合には、ピアノの先生やピアニストの方、ピアノの修理技術を持った調律師に付き添ってもらって判断の手助けをしてもらいましょう。ピアノを楽器店で選ぼうと思ったとき、もし自分で弾くのが苦手であるならばピアノの先生に弾いてもらって下さい。その音色を聴いて先生からのアドバイスだけでなく、自分の印象も大切にしてピアノを選びます。どんなにテクニックを持ったピアニストであっても、他人の好み・感性を100%理解することは困難ですから、最終的には自分の感性で選んだピアノが、きっとながく付き合えるピアノになりますよ。
 ピアノを弾いたことがない初心者の方ならば、ピアノの先生にひとまず何台か弾き比べて良さそうなピアノを何台か選んでもらい、その中から自分の直感で気に入ったピアノを選ぶと良いでしょう。とくに、ピアノは音域の広い楽器ですから、最低音から最高音まで全域の音を聴いてバランス良く響いているのかも確かめてください。

 実際のピアノを弾いて購入できない場合は、カタログの情報だけで購入しなければなりません。この場合は、できればある程度調律・修理の経験年数がある調律師に、ピアノのメーカーや機種を伝えてそのピアノの大まかな特徴や使用環境に合っているかどうかの判断を尋ねてください。調律師は年間に数百台のピアノを調律していますし、年数経験があればそれだけ多くのピアノの修理の経験もあるので、ピアノの品質については詳しいです。特に、特定メーカーのお店の社員よりもフリーの調律師のほうが、多くのメーカーのピアノについての知識がある場合も多いです。

 また、店頭で買う場合でも、知らないメーカーのピアノには不安もあるでしょうし、中古ピアノを購入する場合には、耐久性の不安もあります。これら中身について判断するには、やはり修理経験のある調律師にみてもらうのが一番です。長い付き合いがある調律師でしたら、他店で購入する場合でも付き添ってくれるでしょうし、仮に付き添い費用が必要でもそんなに高い査定料金は取られないと思いますよ。

 良いピアノと言っても、大事なのは、弾く人が望んでいるものと使用環境に相性が合っていないと、結果として演奏者は「良い」と思えません。