5・ピアノの移動・引越し・設置場所
移動・引越しの際の調律はどのタイミングでするのが良いの?



 定期的にきちんとメンテナンスされているピアノなら、引越し前であっても定期的な調律はしておくべきです。同じタイミングでの調律は、ピアノにとって欠かせないからです。むしろ移動するならば移動する前にきちんとした状態で運ばないと、運ぶことによって多少調整がずれることを考えると、運ぶ前にすでに調整がずれていることは、あとでピアノが新しい環境に慣れるために余計な時間がかかってしまいます。
 
何年か調律していなかったピアノを運ぶ場合は、必ず運ぶ前に1度ざっとでも調律と点検をしてもらってください。使うつもりで運んだピアノが、運んだあとに調律を依頼してみたら、実はかなり大掛かりな部品交換が必要であったり、調律ができないほど弦や木の部品が傷んでいるということも珍しくありません。鍵盤をたたいて音が出ているから大丈夫などといった判断では、本当にあとでちゃんと調律や調整ができるかどうかもわからないのです。運ぶことによる調律の狂いは、ピアノの運送に慣れた専門業者が運搬した場合、同じような住宅環境へ移転するのであれば、せいぜい1〜2年分の狂いがあるかどうかです。むしろ、何年も調律していないピアノは、部品の痛み具合が心配ですので、部品の耐久性の点検作業も含めて、移動する前に調律を依頼したほうが安心です。

 引っ越した場合、移動した当日に調律したほうが良いという意見もありますが、実際には移動したことによるピアノの調整の狂いよりも、移動したあとで新しいお部屋の環境になじむまでに、徐々に調整が狂う割合のほうが大きいことがほとんどです。定期的に調整されているピアノなら、移動当日は、設置直後に運送業者が帰る前に、すべての鍵盤をたたいてきちんと音が出ているか、ペダルを使ってその機能が正常に働いているかをその場で確認したら、当日の点検は良しとしてもほとんどの場合大丈夫です。調律は移動後にピアノが新しいお部屋の環境の影響を多少受けた1週間から1ヶ月を目安に依頼しましょう。以前設置してあった環境とかなり異なる環境の場合は、移動後の調律からさらに普段よりも短い期間で調律・点検を依頼します。そうすることでより早く新しい環境にピアノをなじませることができる上、調律師にとってもピアノと新しいお部屋環境との相性の良し悪しや対策方針を点検・調整できますので、思わぬピアノの悪化を未然に防ぐことができます。なお、移動する直前に調律した場合でも、定期的な調律と移動のために起こるピアノの変化の点検は別ですので、移動後にも調律しなければなりません。